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推定相続人の廃除とは何ですか?-NEWS&TOPICS-

お知らせ

2019/07/18

廃除とは、推定相続人の遺留分を否定し、相続権を失わせるという重大な効果を発生させるため、廃除が認められるためには具体的な行為が社会的かつ客観的にみて相続権の剥奪を正当化する程度に重大でなければならず、被相続人及び推定相続人の一方の主張だけで判断することなく、その程度、継続性、発生原因などを勘案して審議されます。

Q:推定相続人の廃除とは?
A:
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、推定同族人に著しい非行があった場合に、被相続人の意思に基づき、家庭裁判所の手続きによって、その推定相続人の相続資格を喪失させる制度です。この相続人廃除には、被相続人の申立てによる生前廃除と被相続人の死後、その遺言に基づいて遺言執行人の申立てによる遺言廃除があります。廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人、すなわち配偶者、子、直系尊属であり、遺留分を有しない兄弟姉妹は、遺言によって相続させないことができるため、廃除の対象とはなりません。廃除の効果は審判が確定した時点で発生しますが、生前廃除は相続開始時となります。
親が被廃除者となった場合、その廃除者の子や孫が代襲相続することができます。

Q:廃除原因には何がありますか?
A:
推定相続人に①被相続人に対する虐待、②被相続人に対する重大な侮辱、③その他著しい非行、があれば非行原因となります。実際にはこれらを総合的に勘案して判断されることになります。
「著しい非行」の例としては、被相続人の財産を無断で担保に入れたり、多額の借金の返済を被相続人に返済させたりした場合等、被相続人が経済的・精神的被害を受けている場合などが挙げられます。なお法は「虐待」と「侮辱」は被相続人に対する行為であることを明記していますが、「著しい非行」は被相続人に対するものであるかに限定されていません。また、これらの行為の原因が被相続人にもある場合や、一時的なものである場合には、廃除が認められない場合があります。

Q:「虐待」「重大な侮辱」に関する審判の具体例
A:
① 末期癌で自宅療養中の妻に対し、療養に極めて不適切な環境を作出した上、その人格を否定するような暴言をした夫について「虐待」による廃除を認めた。
② 在学中から虞犯事件を繰り返し、長じては暴力団員と婚姻して婚姻に反対している父の名で披露宴招待状を出すなどし、親が多大な精神的苦痛を受け、名誉を棄損されたとして排除を認めた。
③ 被相続人にぬるい湯が入ったやかんを投げつけ、「早く死ね」と罵倒し、被相続人に対する扶養義務も尽くさなかった事、その他勘案して廃除を認めた。
④ 暴行の事実を認定しつつ、「暴言・暴行・・・・・は相続人だけに非があるとはいえず、被相続人にもかなりの責任がある」として排除を認めなかった決定。

Q:「著しい非行」に関する審判の具体例
A:
① 窃盗を繰り返し、審判当時も常習累犯窃盗罪で刑に処されて在監中である他、これまで消費者金融から借金を重ね、申立人に手切れ金を要求しているなどの事実があった。
② 被相続人が介護を要する高齢者であるにもかかわらず、その介護を妻に任せて出奔し、扶養料も支払わなかった事案で、相続的共同関係を破壊するに足りる著しい非行だと認められた。
③ 被相続人の財産をギャンブルにつぎ込み、被相続人の自宅を売却せざるを得ない状況に追い込むなどして、高齢の被相続人に多大な心労を背負わせた。
④ 養子が長らく入院と手術を繰り返している被相続人の面倒をみず、居住先の外国から年一回程度帰国して生活費を受領し、被相続人から提起された離縁訴訟等についても執拗に取り下げを迫ったなどのことが著しい非行と認められた。

Q:排除の手続き
A:
廃除手続きは、被相続人の住所地を管轄する
家庭裁判所に対する請求(申立て)によって手続きがなされ、家庭裁判所が職権で廃除原因の有無を調査して審判を下します。調停による手続きはできません。廃除の申立てには被廃除者の同意などは必要ありませんが、審判事件においては審問期日において廃除を求められた推定相続人の陳述を聴かなければならず、この際原則として申立人も立ち会うことができます。
廃除された推定相続人から廃除又はその審判の取消しの申立てを却下する審判が提訴された場合には、申立人が審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます。

Q:廃除を取り消すことはできますか?
A:
被相続人はいつでも廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。この申立てが被相続人の真意に基づくものであると認められれば、廃除は認められます。

Q:生前廃除の請求後、判確定前に相続が開始した場合に誰が手続きを受継するのでしょうか?
A:
親族、利害関係者又は検察官の請求によって、家庭裁判所が遺産管理人を選任し、その遺産管理人が手続きを受継します。ただし、遺言に廃除の記載と遺言執行者の指定があれば遺言執行者が手続きを受継することができます。

Q:相続人廃除の審判確定と戸籍の届出
A:
申立人は相続人廃除の審判確定10日以内に戸籍の届出をしなければならないと定められていますが、この届出は報告的届出であって相続人廃除の効力要件ではありません。
戸籍の届出をする前に被廃除者の債権者が被相続人の財産を差し押さえたとしても無効であり、差し押さえられた遺産の受遺者等は差押債権者に対し、登記なくして自己の権利を対抗できます。

Q:相続人廃除の審判確定前に被廃除者が遺産を譲渡した場合は?
A:
審判の確定によって被相続人の死亡時に遡って被廃除者は相続資格を喪失します。審判確定前に被廃除者から遺産を譲渡された第三者は、遺産についての権利を取得できません。

Q:廃除審判が確定する前に相続が発生した場合の遺産分割手続き
A:
被廃除者を分割に参加させ、廃除が確定したときは廃除者の相続分を再分配するという考え方もありますが、審判の確定があるまでは分割をしないのが妥当と思われます。