相続、遺言、贈与のご相談なら東京都中央区の税理士事務所 薬袋税理士事務所

〒104-0031 東京都中央区京橋3丁目9番7号 京橋ポイントビル3階

  • 書類添付対応
  • 初回相談無料
  • 土日夜間も対応

ホームページを見たと事前にお伝え頂くと、スムーズな対応が可能です

らせNEWS&TOPICS

無権代理行為による本人と無権代理人の地位-NEWS&TOPICS-

お知らせ

2019/09/02

代理権を有しない者が他人の代理人として法律行為をすることを無権代理と言います。いわゆる「なりすまし」です。代理人と称して行為した者が当初からなんらの代理権を持たない場合だけでなく、行為前には代理権が存在したが行為時には消滅していた場合や、代理人がその権限の範囲外の行為をした場合も無権代理に含まれます。無権代理に対して、代理権が存在する場合を有権代理と言います。

Q:相続により本人の地位と無権代理人の地位が同一相続人に帰属した場合、当該相続人はそのような地位を有しますか?
A:
学説上は、二つの考え方があり、それぞれ以下の権利を有することになります。
(地位同化説)本人の地位を相続することにより無権代理行為が治癒され、有権代理人と同様の効果が生ずるという考え方です。本人の代理人になりすまして契約したが、その契約当事者の権利を相続したので、なりすましが解消され真実の契約となったということです。
(資格併存説)無権代理人の地位と相続した本人の地位の両方の地位を有するとする考え方です。この場合、無権代理人の立場として、履行責任と損害賠償責任(民法117条)と、本人の地位を相続した相続人の立場として、追認権(民法113条①)及び追認拒絶権(民法113条②)がその相続人に併存的に帰属することになります。
なお、取引の相手方は、催告権(民法114条)及び取消権(民法115条)を取得します。ただし、もとからなりすましであったことを知っていた場合には取消権はありません。

Q:本人所有不動産を無権代理により売却した場合における無権代理人が本人の地位を単独相続した場合の権利関係はどうなりますか?
A:
相続人は当該不動産の所有権のほか、自己固有の無権代理人の責任及び本人の有した追認・追認拒絶権を取得することになりますが、この相続人は自分がなした行為について追認拒絶権を行使することができるのでしょうか。
地位同化説では、有権代理に変わるので問題はありません。しかし資格併存説では相続人は追認拒絶権を行使できることになります。しかし自ら無権代理を行った者がたまたま相続によって追認拒絶権を取得したからといって、この行為を許すことは信義に反するといえます。その結果相続人は追認するしか手段はありません。取引の相手方は無権代人の履行責任を求め、または取消権を行使できるということになります。

Q:無権代理人が本人の地位を共同相続した場合の権利関係はどうなりますか?
A:
地位同化説であれば、共同相続人が追認を拒絶する限り物件所有権は他の共同相続人と共有になりますので、取引の相手方の単独所有で引き渡しを受けるという利益を害することになります。
資格併存説では、追認権及び追認拒絶権は相続人全員の準共有となり、全員の同意に基づいて行使されるものとなります。地位同化説に基づき地井混同により無権代理人の相続分は有効とすると、他の相続人が追認を拒絶した場合に権利関係が複雑になりますが、資格併存説では相続人全員で追認、拒絶を決定するので、権利関係が安定します。
したがって、取引の相手方は共同相続人が追認しない限り、無権代理人の責任を追及し得るのみということになります。
最高裁では、どちらの説を有効と捉えているのでしょうか。平成5年判決で、無権代理行為は共同相続人全員が追認した場合に限り有効となり、この場合無権代理人が追認を拒絶するのは信義則上許されるものではない。