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2018/04/16

<遺言書で円滑な相続を>

遺言書には利点がたくさん

遺言書を書くことは縁起が悪いと考えている人も多いようで、親に事前に書くことを勧めたところ機嫌を損ねられた、という話もよく聞きます。もしかしたら、遺言書と遺書を混同しているのかもしれません。しかし、遺言書を書いたからといって、早く死ぬことは決してありません。むしろ、相続についていらない心配をすることもなくなり、残りの人生をゆったりと心おきなく過ごせるはずです。今回は、遺言書を書くことのメリットやそれによって妨げるトラブルを紹介していきます。

相続財産を明らかにできること

遺産相続において最初に行うことは、相続財産を明らかにすることです。しかし、自分にとって被相続人となる立場の人が現在所有している財産について、完璧に把握しているという方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。生前に故人が持つ財産というのは、なんとなく聞き出しにくいもの。親族であってもすべてを把握しているケースはあまりありません。遺言書を作成することによってあらかじめ相続財産を明らかにしておくことは、遺産分割をスムーズに行う第一歩となるのです。また、故人と同居していた相続人が他の相続人から遺産の一部を隠しているのではないかと疑われるようなケースもないとは言い切れません。そういった泥沼を回避するためにも、遺言書によって相続財産を明らかにしておき、トラブルを回避しましょう。

遺産分割の方向性を決める

遺言書を書かず、相続が生じてはじめてどのように財産を分割しようかと考えた場合のことを考えてみましょう。預貯金などの相続財産は相続分に応じた分割も簡単ですが、不動産はそうもいきませんよね。誰かひとりが相続するとなると相続人同士での不均衡が生まれますから、分割協議に時間がかかり、トラブルの発生率も増加します。といって、相続人全員の連名で共有名義にしてしまうと、のちのちその不動産を売却したいと思った際に、今度は相続人全員から同意を求める必要が生じるなどの不具合があります。円滑な遺産分割を行うためには、生前に故人が遺言書によって分割の意志を示しておくことや、相続人同士できちんと話し合うことによって遺産の分け方を考えておくことが大事です。もう一つのメリットは、遺産分割協議が不要になるということです。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要となります。よって、ひとりでも決定に合意しない相続人がいればそれだけ時間がかかります。しかし、遺言書がある場合には遺産分割協議の必要がありませんから、スムーズに手続きを進めることができます。

被相続人の為の遺言書

最後に考慮しておきたいことは、相続人以外の人に財産を遺したい被相続人が遺言書を遺すことによって、希望通りの対応を受けられるということです遺言書がない場合には、相続人同士で財産を分割することになります。相続人として認められるのは、被相続人が亡くなった時点での生存配偶者、実子あるいは養子縁組をした養子、再婚をしている場合は前配偶者との間に生まれた子ども、あまりないケースではありますが被相続人の親、子や孫の直系卑属、親などの直系尊属も存在しない場合の兄弟姉妹といった人たちが挙げられます。しかし、例えば内縁の配偶者や事実上の養子、生前にお世話をしてくれた長男の配偶者、公益法人や各種団体といった、相続権のない人へと財産を遺したい場合は、遺言書があれば可能になるのです。

遺言書には、法律によって定められている法定相続人の財産を相続する権利を奪ってしまうほどのとても強い効力があります。ですから、遺産を法定相続人以外に遺したい被相続人はもちろん、本来財産をもらう相続人も、遺言書を書くことについてきちんと考えておいたり、被相続人が遺言を遺していないかの確認をしておいたりする必要があります。遺言書は、生前であれば何度でも書き直すことができ、一番新しいものが有効と認められます。家族関係や心境の変化によって撤回したくなったり、財産の内容が大きく変わったりといったケースにも、遺言書は柔軟に対応できます。遺言書を書いたことがない方や一度遺言書を書いた方も、もう一度見直してみることをお勧めいたします。遺言書がなくても親族で争いが起きなければそれにこしたことはないですが、なかには裁判に発展するケースも少なからずあります。相続が起こった後の遺産相続で揉めて、家庭裁判所に持ち込まれるケースは、最高裁判所が発表している司法統計によると、遺産分割事件の件数(家事調停・審判)は平成21年は13,505件で、平成26年には15,261件に増加しています。後に残す家族が争族にならないためにも、被相続人が遺言を残すことが、家族への思いやりにもなり、ご自身の心の整理に役立つことでしょう。

それでは、トラブルになりそうな、遺言を残しておいた方が良いケースを紹介します。次のどれか1つでも当てはまる場合は、遺言書を作成した方が望ましいでしょう。①兄弟姉妹が不仲②子供がいない③内縁の配偶者やその人との間に子供がいる④結婚した相手に連れ子がいる⑤未成年の子供がいる⑥相続人が多い⑦相続させたくない相続人がいる⑧相続人がいない 以上8項目ありますが、これ以外にも些細なことで家族の関係が壊れるということは絶対にないとは言い切れないので、もしもの事を考えて遺言を残すことはいわば残された家族へのメッセージであり、お世話になった家族のために最後にしてあげられることなのです。