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平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が衆議院本会議で可決・成立し同年7月13日に公布されました。
昭和55年以来の大規模見直しの中でも、今期は配偶者が生前贈与を受けた居住用財産の取り扱いについて触れます。
<改正民法の取り扱い>
婚姻関係が20年以上である夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対し、その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については、民法第903条第3項(被相続人による特別受益の持ち戻し免除)の意思表示があったものと推定し、遺産分割においては原則として当該居住用不動産の持ち戻し計算を不要とする。
遺産分割の公平を図るため、相続人には遺留分の減殺請求の権利が与えられています。この遺留分の計算については、相続人が相続開始前10年前(今回の民法改正前は1年前)に受けた贈与財産及び婚姻や養子縁組のため若しくは生活の資本として受けた特別受益※に該当する贈与を含めてその計算基礎とされています。今回の改正では、相続の年次が近いと思われる配偶者への居住用財産の贈与は、老後の配偶者の生活拠点を確保・安定させる目的でなされたものであると推定され、相続の公平を理由にこれを持ち戻すと被相続人が意図していた目的が達成されないこととなってしまいます。そこでこれを持ち戻し計算に入れない意思が被相続人にあったと類推して計算から外すことにした。これに関連して、贈与税では従前から配偶者の居住用財産の生前贈与については特例規定が存在する。
<従前からある贈与税の取り扱い>
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。相続税の計算にあたっては、被相続人から相続等により財産を取得した者がその相続開始の日前3年以内に贈与を受けた金額は相続財産に持ち戻して相続税を計算することになっています。しかしこの配偶者控除となった金額は、配偶者の老後の生活を保護するという贈与者の意思も鑑みて持ち戻し計算に入れません。あくまで2,110万円が限度ですが、亡くなった年の贈与も対象となるので勝手がいいですね。
両者の違いは、税法は居住用財産または居住用財産を取得するための金銭としているのに対し、民法は居住用不動産に限定しています。親の居住権をめぐって減殺請求するというのも世知辛い話ですが、取り扱いが違うのであればそれにならって物件で贈与した方がいいでしょう。物件の評価額は取得するための資金よりも少なくなりますので、登録免許税等はかかりますが損はありません。また相続税よりも税率の設定が高い贈与ですので、やはり配偶者控除の2,110万円ギリギリで持ち分を贈与される方が多いです。小規模宅地の評価減の適用があったり、配偶者は最低1憶6,000万円まで相続税はかからないとしても、まず配偶者の生活基盤を中心に考えたいところです。
特別受益※・・・遺贈、婚姻若しくは養子縁組のため若しくは別生計後の生活の資本としての贈与