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遺産を分割する前に預貯金を引き出す方法-NEWS&TOPICS-

お知らせ

2018/10/09

平成30年の民法(相続法)の改正により、遺産分割が決まる前であっても被相続人の預貯金を一定額引き出すことができるようになります。もともと預貯金債権は可分債権として自分の法定相続分まで単独で下ろすことができる規定となっていました。しかし遺産の内に占める不動産等の価額が大きくなった昨今、不動産を相続人の一人が相続する代わりの代償金の支払い(これらをまとめて遺産分割協議の中で調整します)に充てる必要が高まったことから最高裁平成28年12月19日判決により、預貯金債権も遺産分割財産に含めることとなっていました。現実には従来も金融機関は相続人間の争いに巻き込まれないよう遺産分割確定前に単独でお金を引き出すことはできなかったケースが多かったと思いますが、今回の改正で金融機関の対応及び家庭裁判所の手続きを経て必要最低限の預貯金を遺産分割前に引き出すことができるようになります。

A(家庭裁判所の判断を経ずに払戻しが得られる制度の創設)
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始時の債権額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額については単独で権利を行使することができる。ただしその額は標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して法務省令で定める額を限度とする。
<民法909条の2(新設)>

B(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
家庭裁判所は、遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を、当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りではない。
<家事事件手続法200条第3項(新設)>

Aは家裁の手続きなしに金融機関に依頼して引出す方法で、当面の生活費や葬儀費に充てるために引き出す方法で、法定相続分の3分の1限度で下ろせますが、実際には葬儀費や生活費の見積もりを提示できる金額までということでしょう。債務の返済までは及びませんので、債務の返済は遺産分割確定まで返済はストップすることになります。

Bは遺産分割がまとまらない場合に、家裁に申立てをした調停や審判の中で一部先行して分割を認めるもので、ここでは生活費にとどまらず、他の共同相続人の利益を害しない範囲で債務の割賦の支払いや恐らく相続税の納税資金も引き出しをすることができるでしょう。

相続税の申告期限までに未分割の場合は、「自宅土地や事業用土地(賃貸事業を含む)の小規模宅地等の評価減」や「配偶者の税額軽減」の制度は使えないため、高い税額を一旦納税しなければなりません。このような面でも争いの起きない内容の遺言書を作っておくことの重要性が伺えますね。遺産分割で揉めてしまうと本当に大変です。ご検討ください。

投稿者:薬袋正司