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被相続人死亡を原因とする死亡退職金受給権は、被相続人の収入に依拠していた者の生活保障を目的として支給されるもので、その受給対象者が直接受け取るべき財産として民法上の相続財産(遺産分割対象財産)になりません。しかしその受給の原因が被相続人の生前の労働・貢献度に基づき支給されることから、みなし相続財産として相続税の対象となります。
Q:法令や社内規定に基づき支給される死亡退職金受給権は相続の対象となりますか?
A:
法令や社内規定などの内規において、民法とは異なる受給権者の範囲や順位が定められている場合には、遺族固有の権利と解され相続に対象にはなりません。
これについて職員の退職手当に関する規程により受給者の範囲や順位が定められている場合には、死亡退職金受給権は相続財産に属さず、受給者である遺族固有の権利であるとする過去の判例があります。
Q:民間企業の社内規程で受給権者を単に「遺族」と定めているにすぎない場合、死亡退職金受給権は相続に対象となりますか?
A:
受給権者を定めた規程の趣旨が専ら死亡者の収入に依拠していた者の生活保障を目的としていると考えられる場合は、遺族固有の権利と解され、相続の対象とならないと考えられます。
死亡退職金の支給等を定めた学校法人の規程が、死亡退職金は、「遺族にこれを支給する」とのみ定められている場合において、死亡退職金の受給権について内縁配偶者と養子が争った事案で、最高裁は、規程は専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法上の相続とは別の立場で死亡退職金の受給権者を定めたものであって、受給権者たる遺族の具体的な範囲及び順位については、私立学校教職員共済組合法及び国家公務員共済組合法の定めるところを当然の前提としていたのであるから、それらの法条の定めるところによるべきであるとして、右遺族の第一順位は職員の死亡の当時、主としてその収入により生計を維持していた配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。)と解すべきであるとしました。
Q:死亡退職金の支給規程のない場合、死亡退職金受給権は相続の対象となりますか?
A:
規程がない場合であっても、法人の決議を経て遺族に支給されたときは、原則として相続の対象にはなりません。
死亡退職金の支給規程がない社団法人の理事が死亡後、財団法人の理事会の決議をもってその妻に死亡退職金が支給されたが、その死亡退職金が相続財産を構成するか否かが問題となった事案で、最高裁は特段の事情がない限り相続財産に属するものではなく、妻個人に帰属するものであるとの判断を示しました。理事会の決議が受給者の定めの補充であると考えられたものです。
Q:受給者を「遺族」と定めている死亡退職金について、被相続人が第三者へ遺贈した場合、遺贈の効力は認められますか?
A:
法律や内規等において、民法の相続人とは異なる受給者が定められている場合には、相続人の固有の権利として相続の対象になりません。また、単に「遺族」と定められている場合にも趣旨が生活保障にあるといえる場合にも相続財産には含まれません。
このような場合に、死亡退職金を遺言によって第三者に遺贈した事案で、最高裁で死亡退職金の受給権は、受給権者である遺族固有の権利であり、遺贈の対象にはならないと判示しています。
Q:遺族年金は相続の対象になりますか?
A:
遺族年金は、厚生年金法、国家公務員共済組合法などで受給権者の範囲や順位が民法の定める相続人の範囲、順位と異なっていることや、受給権の消滅事由又は各種の支給停止事由があることなどから、同年金は専ら被保険者又は被保険者であった者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とするものといえますので、遺族固有の権利と解されます。遺族年金以外の弔慰金、葬祭料、損失補償などの遺族給付についても同様のことがいえます。