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契約上の地位も、被相続人に属した一切の権利義務に該当しますから、相続人が承継するのが原則です。ただし、契約上の地位が一身専属的な地位あるいは性質上承継されるべきものではない地位であったり、また、特殊な事案ですが、無権代理人が本人の地位を相続したり、逆に本人が無権代理人の地位を相続した場合には、相反する地位が同一人に帰属するため権利義務の承継については事案ごとの個別の考察が必要となります。
Q:共同相続人の1人は預金契約上の地位に基づき単独で被相続人名義の預金口座取引開示を請求することはできますか?
A:
預金取引から推測される相続財産の調査、相続の承認・放棄の判断等のため、取引経過の開示を受けることは預金の増減とその原因等について正確に把握するために重要です。過去判例では、預金者が死亡した場合、共同相続人の1人による開示請求があった場合、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使できるものとしました。
Q:貸金庫契約の借主の地位は相続の対象になりますか?
A:
貸金庫契約は、金融機関の金庫室の一区画を利用者に対して提供し、利用者がこれを貴重品等の保管場所として使用する形態の契約で、一種の賃貸借契約です。一身専属性を有するものではなく、相続によりその権利を承継できるものと考えられます。
しかし、相続後の金庫の開扉及び金庫内の物品の受領の請求は、一種の処分行為であるので、相続人全員の同意がない限り、共同相続人1人による開扉請求を認めていません。したがって、遺産分割調停によって合意を成立させるか、審判手続きに移行した場合に、財産管理者を選任してもらい実行することになります。
Q:借家権は相続の対象になりますか?
A:
借家権は、一身専属権ではなく通常の財産権ですから、借主の地位は相続人が承継します。
ただし、被相続人と同居していた内縁配偶者がいる場合には問題があります。内縁配偶者は相続権を有しません。内縁配偶者は原則として借家権を相続することはできません。しかし、内縁配偶者の居住を保護する必要があるため、借地借家法により、被相続人に相続人がいない場合には、内縁の妻に建物の賃借人の権利義務を承継できる途を規定しました。しかし借地借家法は被相続人に相続人がいる場合は規定しなかったことから完全に内縁配偶者の居住権を保護するものではありませんでした。過去判例では、内縁配偶者の居住に配慮をし、相続人からの明渡し請求について、権利の濫用であると判示しています。
Q:使用貸借の借り主の地位は相続の対象になりますか?
A:
民法599条で、使用貸借は借主の死亡によってその効力を失うと規定しておりますので、原則として借主の地位は相続の対象になりません。使用貸借は貸主の借主に対する個人的な信頼関係に基づくものであり、一身専属性を有するからです。
原則から外れる判例として以下のようなものがあります。
建物が借主所有である、建物所有目的の土地の使用貸借においては、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視されるべきとして、使用貸借権は借主の死亡によって当然に終了することにはならないと判示しています。これを一般化することは困難と思われますが、事案によっては相続の対象となる余地を残すものと考えられます。
建物の使用貸借について、貸主と借主の間に実親子同然の関係があり、貸主が借主の家族と長年同居していたような場合に、貸主と借主の家族との間には、貸主と借主本陣との間と同様な特別な人的関係があるものとして、民法599条の適用を否定しています。
Q:公営住宅使用権は相続の対象になりますか?
A:
公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を供給することにより国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものです。公営住宅法により、入居条件を具備しなければ入居できず、事業主体の長は条件を充たさない場合には明け渡しを請求できます。このような公営住宅法の規程の趣旨に鑑みると、入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用できる権利を当然に承継できる余地はないものと思われます。
Q:居宅介護サービス費の支給を受ける権利は相続の対象になりますか?
A:
介護保険法に定める居宅介護サービス費の支給を申請したものの、不支給の決定を受けた後に死亡したので、相続人が同処分の取り消しを求めた事案について、東京地裁は、「同法の適用を受けた場合には、居宅要介護被保険者が居宅介護サービス費の支給を受ける権利を取得するとともに、当該権利の存在を前提として、当該指定居宅サービスを提供した指定居宅サービス事業者にも支給請求権が発生する場合がある旨を定めており、このような法が定める権利の性質に鑑みれば、その権利はその存続が第三者である指定居宅サービス事業者の利害にも関係を有するものであり、居宅要介護被保険者の一身に専属する性質の権利であるとはいえず、相続の対象になると解するのが相当」と判断しました。